超原子価結合とは? 三中心四電子結合、三中心二電子結合についてわかりやすく解説

無機化学

こんにちは。 ミドリケムです。

今回の記事では超原子価結合について解説していきます。

この結合は正直結構マイナーです。しかも、古典的な原子価結合法ではその成り立ちが説明できません。なぜ、このような結合ができるのか? これを量子論に基づく分子軌道法を用いて説明することができます。

今回の記事では
・超原子価結合
・三中心四電子結合
・三中心二電子結合
・ハロゲンと貴ガスとのエネルギー準位図
について解説していきます。

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超原子価結合とは?

まずは、He2H+、XeF2、XeF4、XeF6、SF6、およびB2H6がどのように結合しているのか説明できますか? ほとんどの方々が感じたことは「キセノンXeは貴ガスだから結合しないのではないか?」と疑問に思いますよね? つまり、最外殻電子が8個そろっておりオクテット則を満たして他の原子と結合に関与しないのではないか? しかし、これらの化合物は実際に存在します。

キセノンXeは確かに貴ガスです。しかし、5周期目であるため、最外殻電子が陽子にあまり束縛されにくくなり、他の原子と結合に関与してきます。つまり、オクテット則を満たしているにも関わらず結合に関与しています。

ではどのような原理でオクテット則を満たしたキセノンXeが結合に関与しているのか? 古典的な原子価結合法では説明することが難しいです。昔はd軌道拡張説が唱えられてきましたが、現在では否定的です。

現在では量子論に基づく分子軌道法を用いて超原子価結合で説明されます。また、超原子価結合でできた化合物を超原子価化合物といいます。

二フッ化キセノンXeF2の分子軌道法(三中心四電子結合)

ここで、二フッ化キセノンXeF2について分子軌道法を用いて解説していきます。それぞれXeは電子2個(5p軌道)、Fは電子1個ずつ(2p軌道)結合に関与し、Xeを中心にFーXeーFと結合します。それぞれの原子軌道は以下の図の通りです。

図1.Xe,Fの原子軌道

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ここで重要なのが、原子軌道から全くエネルギー順位が変わっていない非結合性軌道も存在します。これはFの原子軌道がXeの原子軌道と全く関与していないため、重なり合いも反発も起こっていません。つまり、Fの原子軌道とエネルギー順位が全く変わっていません。実際、Fのp軌道が全く変化がなく、節もぽっかり空いたXeの軌道の中に存在します。

結合に関与する4個の電子は下から2個ずつ収容され、結合性軌道、非結合性軌道に収まります。反結合性軌道には電子は収容されません。

図2.XeF2の分子軌道図

結合性軌道は分子全体に電子が非局在化しており、非結合性軌道はそれぞれF上に電子が存在しています。そのため、Fの電子密度は高くなっています。

結果、電子のエネルギー順位は3個の原子軌道の総和と比べて全体的に低くなっています。そのため、XeF2は結合しています。このように非結合性軌道ができた結合を超原子価結合といい、また超原子価結合の中でもこの結合に関与している原子は3個、電子は4個であるため、三中心四電子結合ともいいます。

三中心四電子結合は主にXeF2、XeF4、XeF6、SF6、He2H+が形成しています。

これが古典的な原子価結合法では説明できない量子論を用いた分子軌道法の説明です。

ジボランB2H6の分子軌道法(三中心二電子結合)

続いてジボランB2H6の結合について解説していきます。ジボランはボランBH3が二量体となってできた化合物です。ボランは単量体では不安定なため、二量体として存在しています。

図3.ボランからジボランの二量化

さらに、ホウ素Bはsp3混成軌道として存在しています。そのうち、2個の電子は2個の水素Hとσ結合をします。残った電子1個と空の軌道が超原子価結合B-H-Bに関与します。

図4.ホウ素Bのsp3混成軌道

ジボランでは2個のホウ素のsp3混成軌道(片方は電子1個の軌道、もう片方は空軌道)、1個の水素のs軌道(電子1個)が二フッ化キセノンXeF2と同様に位相が重なり合った結合性軌道、水素の軌道が無く重なり合いも反発も無い節が1個の非結合性軌道、位相がホウ素と水素とでは異なって反発し合っており節が2個の反結合性軌道の計3個の軌道が出来上がります。

2個の電子は結合性軌道に収容されます。

図5.B2H6の分子軌道図

結果、電子のエネルギー順位は3個の原子軌道の総和と比べて全体的に低くなっています。そのため、二つのB-H-B結合ができB2H6は二量化します。超原子価結合の中でもこの結合に関与している原子は3個、電子は2個であるため、三中心二電子結合ともいいます。

三中心二電子結合は主にB2H6、(Al(CH3)3)2が形成します。

ハロゲン、貴ガスのエネルギー準位

三中心四電子結合として、XeF2、XeF4、XeF6が存在すると解説しました。ではフッ素を塩素に変えたXeCl2、XeCl4、XeCl6は存在するのか? 答えはNoです。

理由はエネルギー準位図を見れば簡単です。F2p軌道はNe2p,He1s軌道よりはエネルギー準位が高いが、Xe5p,Kr4p,Ar3p軌道と比較するとエネルギー準位が低いです。言い換えると、Xe,Kr,ArはFと三中心四電子結合した方がエネルギー準位が低下し安定化するため、超原子価結合を形成します(実際、Krのフッ化物は不安定であり、Arのフッ化物はまだ発見されていませんが…)。

Cl3p軌道はKr4p,Ar3p軌道よりは高く、Xe5p軌道よりは低いがあまり差がないため三中心四電子結合が形成しません。どうにかラドンRnが塩素化できるのではないかと予想されるぐらいです。

図6.ハロゲンと貴ガスのエネルギー準位図

まとめ

・超原子価結合は古典的な原子価結合法では説明できない量子論を使った分子軌道法で説明できる結合論
・主に三中心四電子結合、三中心二電子結合がある
・エネルギー準位が全く変わらない非結合性軌道が形成される
・ハロゲンと貴ガスとの超原子価結合はエネルギー準位に差があるFとXeが存在する

KrとXeのフッ化物分子は1933年にポーリング(L. C. Pauling)氏により予言されていました。当時はまだ量子化学が発展途上であり、また貴ガス元素では外側のsとp軌道がすでに閉殻構造でとても安定しており、Fと分子をつくるためには安定な最外殻電子を大きなエネルギーで引き抜かなければならず、これらの理由から貴ガス元素のハロゲン化物の存在は全く予期されていませんでした。

しかし、実際はポーリング氏の予言は的中していました。この超原子価結合は化学結合の解釈に関する分子軌道法の優位性を決定的に示したものとなりました。

まだポーリング氏は予期した八フッ化キセノンXeF8とハロゲン化アルゴン分子の発見は報告されていません。XeF8は三中心四電子結合が4本で、Xeの最外殻の5p電子だけではなく5s電子もFに渡さなければならず難しそうです。現実的な発見はArF2が可能性がありそうです。

参考文献「ベーシックマスター 無機化学」増田 秀樹、長嶋 雲兵 共編

本日のブログはここまで。 最後まで読んで頂きありがとうございました。

プロフィール
ミドリケム

はじめまして。ミドリケムです。
性別:男性
年代:30代半ば
専攻:応用化学、有機化学

大学で応用化学を専攻し、研究室で有機合成をしてきました。
社会人でも転職は2回しましたが、現在でも有機化学をしています。

スキルアップ重視でブログを始めました。もちろん収益化もできたら嬉しいのですが笑

化学の基本的な事から専門的な事まで幅広く取り扱おうと思っています。中には簡単すぎて退屈、難しすぎてわからないと感じる事もあるかと思います。

少しでも化学に興味を持ってくれたらと思っています。疑問やここを解説してほしい、もう少しわかりやすく解説してほしい、などなど些細な事でも構いませんので、何かあればお問い合わせから連絡して下さい♪

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