こんにちは。ミドリケムです。
本日はエントロピーを中心に熱力学第二法則、カルノーサイクルについて解説していきます。
当記事でも数式が満載であり、今までの熱力学の記事を見返しながら読まないと難しいかもしれません。個人的には宣伝になってしまうかもしれませんが、以下の参考書といった紙媒体の書籍や自分でルーズリーフなどに公式集をまとめて読んだ方が良いかもしれません。
やはり、数式ばかりでややこしくイメージがつきにくいところが熱力学を苦手とさせる要因かもしれません。繰り返しになりますが、数式を丸暗記というよりは問題演習を繰り返してインプットすることが熱力学を極める最大の近道だと思います。
本日の記事では主に
・可逆、不可逆変化
・第二種永久機関
・熱力学第二法則
・カルノーサイクル
・エントロピー
について解説していきます。
参考文献「熱力学 ―基礎と演習―」山下 弘巳 他 著
この文献は入門書の様に簡単すぎず、またアトキンスやバーローのような量子化学や化学速度論等が絡んでこなくて難しすぎない書籍であり、さらには問題演習もあり、熱力学の基礎を学ぶ上では大変有効な書籍です。
参考文献「トコトンやさしいエントロピーの本」石原顕光 著
エントロピーが何なのかいまいちピンとこない人にオススメです。
不可逆変化と可逆変化
熱は高温から低温へと移動し、氷は解け、気体は混合する。これら自然界の現象は我々が何もしなくても勝手に起こります。さらに、これらの変化は自然には元に戻りません。このように自然界の勝手に起こり元に戻らない変化を不可逆変化といいます。
これに対して、変化が起こっても元に戻せる変化を可逆変化といいます。ピストンを押すと中の圧縮された気体がピストンを押し戻す力が働きます。これは何もしなくても勝手に起こるため、可逆変化です。
なお、ピストンを押すのは人間の力だけではありません。ピストン中の気体は外圧が高気圧だとゆっくりと圧縮しますが、逆に低気圧になるとゆっくりと膨張します。このように熱平衡状態に十分に近い状態に保ちながら無限大の時間をかけてゆっくりじわじわと行う変化を準静的変化といいます。
熱力学第二法則
第二種永久機関は実現可能?
ここで、第二種永久機関は実現可能か考えていきます。第一種永久機関とは周囲からエネルギーを加えずに系が仕事する機関であり、熱力学第一法則から実現不可能となりました。
関連記事(第一種永久機関、熱力学第一法則)

今度は第二種永久機関について考えていきます。第二種永久機関とは、とある熱源から熱を受け取り全て仕事に変えて、仕事したことで発生した熱を元の熱源に返す機関です。
具体例として、とある船が海から熱を受け取り、それがエンジン内で仕事となり、そのことで発生した熱を海に返すということです。そうすることで、エネルギーの実質の変化は0となります。

図1.第二種永久機関
結論からいうと、第二種永久機関も実現不可能です。理由は以下の通りです。
・熱は100%仕事に変換できない
・自然と低温から高温へ熱の移動は不可能
まずは熱効率です。熱効率η(イータ)はその名の通り熱がどれだけ仕事に変換できるかの割合であり、定義式はη=W/Qです。熱効率が1に近づくほど熱が仕事に変換しています。しかし、実際は1になることはなく、η<1です。
また、海は原則、エンジンよりも低温です。低温から高温へ熱は何もせずに勝手に移動はしてくれません。実際、冷蔵庫や冷房はコンセントを差さなければ動きませんよね?
以上のことから、第二種永久機関は実現不可能です。ここで、新たに熱力学の法則が登場します。
熱力学第二法則とは?
登場するのが熱力学第二法則です。これは二通りの表現があります。
・トムソン(ケルビン)の原理
…温度の決まった1つの熱源から熱を吸収し、それを全て仕事に変えて、それ以外に何の変化も残さない過程は実現できない。仕事が熱に変わるのは不可逆である。(η≠1)
・クラウジウスの原理
…外部に何の変化も残さず、低温の熱源から高温の熱源へ熱を移すことは不可能である。高温熱源から低温熱源への熱の移動は不可逆である。
上述したように、仕事→熱への変換、および高温→低温への熱の移動は自然界で勝手に起こる過程であり、不可逆変化となります。具体例をいうと、前者は物体が動くと摩擦や空気抵抗が働き熱が発生し、後者は熱い飲み物をほったらかしにしておくと熱は空気中に逃げて冷えます。しかし、空気中の熱が勝手に物体を動かしたり飲み物を温めたりしませんよね?つまり、逆の過程は何か手を加えなければ勝手に起こりません。
よって、第二種永久機関はこの熱力学第二法則に反するため、実現不可能となります。
カルノーサイクルとは?
では熱は仕事に変えることはできないのか? 答えは半分正解で半分間違いです。
実際、火力発電は熱により蒸気を動かしてタービンを回して電気を産み出します。つまり、「熱エネルギー→運動エネルギー(仕事)→電気エネルギー」です。しかし、その熱源を得るためには化石燃料を燃やす必要があります。よって正しく表現すると、「化学エネルギー→熱エネルギー→運動エネルギー(仕事)→電気エネルギー」です。また、自動車を動かすにもガソリンを燃焼させることで仕事として動きます。
よって、何かエネルギーを加え高温の熱源があると、熱が低温に移る際の熱の一部を仕事として変換します。しかし、熱効率η=1ではないので、100%仕事には変換しません(一部の熱のみ)。火力発電も燃料から電気への変換率は45%、良くて55%ぐらいです。
では、どのようにして系が熱を受け取って仕事に変換しているのか?言い換えると、どのようにして熱が系内の気体を仕事させて往復運動(サイクル)をさせているのか?
この熱によるサイクルは産業革命の時に様々な熱力学者が熱効率の良いサイクルを研究していました。そして、1824年にフランスのカルノー氏が高温の熱源から低温の熱源へと移動する熱を最大限有効に仕事に変える理想的な熱機関を発表しました。この熱機関をカルノーサイクルといいます。
カルノーサイクルは等温膨張→断熱膨張→等温圧縮→断熱圧縮を繰り返してサイクルを起こしています。サイクルであるため、可逆過程です。言葉で説明するより、実際に図で表した方が良いので、以下にカルノーサイクルの図を示します。

図2.カルノーサイクル
次に、点A→B→C→D→Aのサイクルを一つずつ解説していきます。
なお、当記事ではWを系がされる仕事、-Wを系がする仕事としていますが、書籍によっては符合が逆の時もあります。
また、おさらいとして、熱力学第一法則はdU=dQ+dW、⊿U=Q+Wとなります。
関連記事(等温変化、断熱変化、熱力学第一法則)

等温膨張過程(A→B)
等温膨張であるため、⊿T=0であり、Tは定数扱い(=Th)です。また、温度変化に由来する内部エネルギー変化も⊿U=0です。
この時、周囲から熱Qhを受け取ります。その熱、および系がする仕事(膨張)-WABは
と表すことができます。Qh>0より、系は確かに熱を受け取っており、-WAB>0、つまりWAB<0であるため、系は仕事をしています(膨張)。
この過程では受け取った熱がそのまま外部に向けてする仕事になります。
断熱膨張過程(B→C)
断熱膨張であるため、Q=0であり、キルヒホッフの関係式から
となります。ここで、定積熱容量Cvが登場しますが、Cv は「定積変化専用の熱容量」ではなく、理想気体での内部エネルギー変化ΔU を表す係数として現れています。
WBC<0のため、系は仕事をしています(膨張)。
等温圧縮過程(C→D)
等温圧縮であるため、⊿T=0であり、Tは定数扱い(=Tl)です。また、温度変化に由来する内部エネルギー変化も⊿U=0です。
この時、周囲から熱Qlを受け取るとします。その熱、および系がされる仕事(圧縮)WCDは
と表すことができます。Ql<0より、系は確かに熱を放出しています。
ここで、「周囲から熱Qlを受け取る」という表現をしているためQl<0となりましたが、「周囲へと熱Qlを放出する」という表現になると(例えるなら「周囲から-10kJ受け取る」→「周囲へと10kJ放出する」)、単純にQlの絶対値となるため符合がひっくり返って
となります。下記の熱効率の計算ではこちらを使用します。
また、-WCD<0、つまりWCD>0であるため、系は仕事をされています(圧縮)。
断熱圧縮過程(D→A)
断熱膨張であるため、Q=0であり、キルヒホッフの関係式から
となります。WDA>0のため、系は仕事をされています(圧縮)。
熱効率
熱効率を考える前に、断熱変化を少し考えましょう。断熱変化時、dQ=0となるため、
となります。ここで、キルヒホッフの関係式から、dU=CvdTであるので、
さらに、マイヤーの関係式R=cp-cvより、nR=ncp-ncv=Cp-Cvとなるため、
両辺を積分すると、
ここで、比熱比κ=cp/cv=Cp/Cvより、
よって、TVκ-1=一定となります。ここで、κ-1>0のため、断熱膨張(V2>V1)ではT2<T1となり系の温度は低下します。
ここで、熱効率の話に戻ります。η=W/Qのため、カルノーサイクル全体の仕事W、熱Qについて考えていきます。仕事をした(膨張過程)のは-WAB、-WBC、仕事をされた(圧縮過程)のがWCD、WDAであるため、
ここでのQlは放出量を問うているため、上記の式とは符合がひっくり返っています。
ここで、A→B、C→Dにおいて、断熱過程であるので、先程の式TVκ-1=一定を利用すると、
となります。これを先程のWに代入すると、
となります。W=Qh-Qlであるため、カルノーサイクルは受け取った熱量Qhから放出したQlの差分を全て仕事に変換したことになります。
カルノーサイクルが受け取った熱量はQhのみであるため、熱効率ηは
となります。この熱効率から言えることは
①η<0より、高温熱源から受け取る熱量を全て仕事に変換できない。
②高温と低温の温度差が大きいほど、熱効率が良好になる。
ということです。
実際の熱機関は摩擦や熱伝導などによる損失をともなうので、効率はカルノーサイクルよりもかなり低くなります。蒸気機関は20%以下、ガソリンエンジンは20~30%以下、ディーゼルエンジンやガスタービンは40%前後になります。仕事は100%熱に変換できますが、熱は100%仕事に変換することはできません。そういう意味では、仕事は熱よりも高品質のエネルギーとなります。
カルノーサイクルの研究は熱の全てを仕事に変換することができない、いわば熱力学第二法則の先駆的な研究となったのです。
エントロピーとは?
ここで、カルノーサイクルの熱効率より、
このことにより、温度が違う熱源でも熱と温度の商は等しいことになります。言い換えると、1サイクルしても高温の熱源と低温の熱源のQ/Tの値は保存されることになります。ここで、クラウジウス氏はこのQ/Tを系のエントロピーと名付けました。エントロピーの定義は以下の通りです。
ここで、rは可逆過程を示しています。エントロピーとは系の乱雑さやエネルギーの質を示すものであり、状態関数です。系の乱雑さ(物質やエネルギー)が増加すると、エントロピーは増加します。
カルノーサイクルは1サイクルすると、元の形に戻ります。よって、状態関数であるエントロピー変化は0です。このように、元に戻る可逆変化はエントロピー変化⊿S=0となります。
ただし、これは系内部のみの着目です。視野を広げて系の周囲も含め全体的にみると、カルノーサイクル機関は熱を加えています。高温の熱源はもちろん自然に発生するものではなく、例えば燃料の燃焼(化学エネルギー→熱エネルギー)、ヒーター(電気エネルギー→熱エネルギー)等、何かしらのエネルギーから熱へと変換しています。
つまり、カルノーサイクル系内だけをみるとエントロピー変化はありませんが、全体を見るとエネルギーを熱として系に与え、一部は放出し分散している、つまりエントロピーは増大しています。
高温の熱源は系に熱を与えなくても、ほっておけば低温の熱源、つまり周囲(空気)に分散されます。これもエネルギーの乱雑、つまり、エントロピーの増大です。
このように、熱力学第二法則はトムソンの原理とクラウジウスの定理の二つがありますが、まとめると、エントロピーは決して減少せず、宇宙全体を孤立系としてみると自然な変化はエントロピーが増大する方向にのみ自発的に進みます。
可逆、不可逆変化からカルノーサイクルまで解説しましたが、当記事で一番言いたかったことは熱力学第二法則のこのまとめです。
まとめ
・不可逆変化…自然界の勝手に起こり元に戻らない変化
・可逆変化…変化が起こっても元に戻せる変化
・準静的変化…熱平衡状態に十分に近い状態に保ちながら無限大の時間をかけてゆっくりじわじわと行う変化
・第二種永久機関…とある熱源から熱を受け取り全て仕事に変えて、仕事したことで発生した熱を元の熱源に返す機関であり、実現不可能
・カルノーサイクル…等温膨張→断熱膨張→等温圧縮→断熱圧縮を繰り返してサイクルを行う可逆変化
・カルノーサイクルの熱効率…
・エントロピー…系の乱雑さやエネルギーの質を示すものであり、状態関数
・熱力学第二法則
トムソン(ケルビン)の原理
…温度の決まった1つの熱源から熱を吸収し、それを全て仕事に変えて、それ以外に何の変化も残さない過程は実現できない。仕事が熱に変わるのは不可逆である。(η≠1)
クラウジウスの原理
…外部に何の変化も残さず、低温の熱源から高温の熱源へ熱を移すことは不可能である。高温熱源から低温熱源への熱の移動は不可逆である。
まとめると、エントロピーは決して減少せず、宇宙全体としてみると自然な変化はエントロピーが増大する方向にのみ自発的に進行
今回の内容も中々むずかしかったかもしれません。そもそもエンタルピーとは何なのかいまいちピンとこない人もいらっしゃるかと思います。次回の記事では、そのエンタルピーについてもう少し詳しく解説していきます。
次回記事(エントロピー)

今回のブログはここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。


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