クロスカップリングとは? 鈴木・宮浦クロスカップリングについて詳しく解説

有機化学

こんにちは。ミドリケムです。

今回はクロスカップリングについて解説していきます。

クロスカップリングとは以下で解説しますが、違うもの同士をくっつける反応のことです。

主に触媒としては金属錯体を用いますので、クロスカップリングは有機金属化学の研究分野で幅広く登場します。まさに、有機化学と無機化学の合体ともいえますね。

さらに、クロスカップリング、もとい有機金属化学は日本人が活躍されており、ノーベル化学賞も受賞されているほどです。

今回はそのクロスカップリング、特に有名な鈴木・宮浦クロスカップリングを中心に解説していきます。

当記事では主に
・クロスカップリング
・鈴木・宮浦クロスカップリング
・鈴木・宮浦クロスカップリングの進化
・クロスカップリングの応用例
について解説していきます。

参考文献「トコトンやさしい クロスカップリング反応の本」鈴木章 監修、山本靖典、江口久雄、宮崎高則 著

鈴木・宮浦クロスカップリングを発表した鈴木章氏が監修であり、当記事で解説しきれない内容まで詳しく記載されています。

クロスカップリングとは?

改めて解説しますと、カップリングとは化合物同士をつなげることを指します。その化合物は同一化合物でした。そこで、「クロス」カップリングとは異なる化合物をつなげることを指します。異なった化合物をつなげることで、単純な化合物ではなく高機能な化合物をつくることが可能となります。

図1.従来のカップリングとクロスカップリングの模式図

そして、クロスカップリングには主に金属を触媒として用います。クロスカップリングの歴史は以下の表に示しました。

表1.クロスカップリングの歴史

金属(特にPt)を触媒としてクロスカップリングは進行します。例として、最も有名な鈴木・宮浦クロスカップリングについて解説していきます。

鈴木・宮浦クロスカップリングとは?

鈴木・宮浦クロスカップリングとは、塩基存在下、パラジウムPdを触媒として有機ハロゲン化合物と有機ホウ素化合物をカップリングさせる合成法です。

図2.鈴木・宮浦クロスカップリング

名前からして、鈴木章氏と宮浦憲夫氏が発見、発表し、鈴木氏は2010年にノーベル化学賞を受賞されています。

この反応の最大の特徴は有機ホウ素が水や空気に安定であり、穏やかな反応で高収率で進みます。さらには毒性が低く、製薬にも使われいる反応です。

こんなに素晴らしい反応にもかかわらず特許を出願していないため、世界中の誰もがこの反応を利用することができます。

反応としては、上図の通りですが、実際はサイクルがクルクル回って反応が起きています。

第一段階として、パラジウムが有機ハロゲン化合物R1ーXに電子を与え、その結果、パラジウムが結合の中に入り込みR1ーPd(Ⅱ)ーXが生成します。この反応を酸化的付加反応と言います。

第二段階として塩基により水酸化物イオンが結合した有機ホウ素R2ー(OH)3とR1ーPd(Ⅱ)ーXの組み換えが起こり、R1ーPd(Ⅱ)ーR2が生成します。この反応をトランスメタル化反応(金属交換反応)と言います。

第三段階はR1ーPd(Ⅱ)ーR2のパラジウムが電子を持ち去って脱離し、R1ーR2が生成します。この反応を還元的脱離反応と言います。この時、パラジウムは再生されるため、触媒量(少量)だけで良いというわけです。

図3.鈴木・宮浦クロスカップリングのサイクル図

そして、表1.に示したクロスカップリングはほとんどはこの酸化的付加、トランスメタル化(金属交換)、そして還元的脱離反応により進行します。

鈴木・宮浦クロスカップリングの進化

この様に、鈴木・宮浦クロスカップリングはハロゲン化有機化合物と有機ホウ素が塩基性条件下、Pd触媒で温和に反応を高収率で進行させることができます。しかし、問題点もいくつかあります。そのたびに改良を繰り返しており、鈴木・宮浦クロスカップリングは絶えず進化し続けています。

ボロン酸の進化

有機ボロン酸はイオン反応に不活性で酸素や水に安定で使いやすい試薬です。とはいったものの、ボロン酸も完全に安定というわけではなく問題点があります。

一つ目として、ボロン酸の三量化です、三分子が集まって脱水しながら結合し、三量体になることがしばしばあります。こうなると、単量体(有機ボロン酸)と三量体(ボロキシン)の混合物となるため反応に使う時にモル数が計算できません。

図4.有機ボロン酸の三量化(塩基による活性化も含め)

二つ目に、ホウ素ー炭素結合の解離です。ホウ素に結合した有機基が電気陰性である場合やホウ素ー炭素結合の周辺が立体的に込み合った有機ボロン酸は塩基水溶液中でホウ素ー炭素結合の解離が起こることがあります。

三つ目にボロン酸への求核攻撃です。ホウ素に空軌道があるため、塩基以外の非共有電子対を持った試薬が求核攻撃を受けることもあります。

図5.有機ボロン酸への非共有電子対を持った試薬の求核攻撃

よって、ほとんどの鈴木・宮浦クロスカップリングは有機ボロン酸を過剰に使用されます。

これらの問題点を解決するために、ホウ素のエステル化による三量化の防止、ホウ素に電気陰性度の高いフッ素Fを結合することでのホウ素に結合した有機基の反応性の低下、さらにはホウ素の空軌道にあらかじめ陰イオンと結合させることでの求核攻撃の防止などといった対策がとられています。以下にそれらの有機ホウ素化合物を示します。

図6.鈴木・宮浦クロスカップリングに使用される有機ホウ素化合物

芳香族誘導体を中心に、現在は約100種類が市販されているそうです。

塩基が無くても反応が進行

有機ホウ素化合物を活性化するために、塩基が必要であるといいました。しかし、ボロン酸の進化でも述べたように、一部の有機ホウ素化合物は塩基水溶液中不安定で反応しにくい種類もあります。

よって、開発されたのが以下の環状トリオールボレートの4級アンモニウム塩、およびリチウム塩です。これらは塩基を使用せずに鈴木・宮浦クロスカップリングを進行させることができます。

図7.塩基のいらない環状トリオールボレート塩

また、陽性パラジウム触媒といった一部のパラジウム触媒を利用することで、塩基が無くても反応が進行することもわかってきました。

金属触媒の変更

また、金属触媒もパラジウムではなく、ニッケルや鉄といった他の金属も使われるようになってきました。パラジウムは希少であり、毒性も強いです。そのため、存在比が高く、また毒性の小さいニッケルや鉄を触媒として使用することも増えてきました。

クロスカップリングの応用

鈴木・宮浦反応を代表としてみてきたクロスカップリングですが、現在では以下の素材に利用されています。

・液晶ディスプレイ
・有機EL
・レジスト
・有機半導体
・蛍光色素
・医薬品

詳しくは上述の参考文献に詳しく記載されています。

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まとめ

・クロスカップリング…異なる化合物をつなげること

・クロスカップリングは主に酸化的付加、トランスメタル化(金属交換)、還元的脱離を繰り返して反応

・鈴木・宮浦クロスカップリングは高収率で温和な反応

・有機ホウ素化合物は基本的には安定であるが、さらに安定化するため、ホウ素部位を改良

・塩基が必要ない反応も開発

・パラジウム触媒に変わるニッケル、鉄触媒を開発

いかがだったでしょうか? 有機金属化学は表1からもわかるように日本人が大活躍しています。他のクロスカップリングも紹介したかったけどさすがに厳しかったです。申し訳ありません。

クロスカップリングもまだまだ改良の余地はあると思います。少しの改良が我々人類の発展に繋がると考えるとワクワクしてきますね。

今回のブログはここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。

プロフィール
ミドリケム

はじめまして。ミドリケムです。
性別:男性
年代:30代半ば
専攻:応用化学、有機化学

大学で応用化学を専攻し、研究室で有機合成をしてきました。
社会人でも転職は2回しましたが、現在でも有機化学をしています。

スキルアップ重視でブログを始めました。もちろん収益化もできたら嬉しいのですが笑

化学の基本的な事から専門的な事まで幅広く取り扱おうと思っています。中には簡単すぎて退屈、難しすぎてわからないと感じる事もあるかと思います。

少しでも化学に興味を持ってくれたらと思っています。疑問やここを解説してほしい、もう少しわかりやすく解説してほしい、などなど些細な事でも構いませんので、何かあればお問い合わせから連絡して下さい♪

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