半導体はなぜ電気が流れる?分子軌道法を用いて解説

無機化学

こんにちは。ミドリケムです。

今回は半導体について解説していきます。

半導体と言われるとどういうイメージがありますか? 名前からしておおよそ想像できるかもしれませんが、半分導体、つまり導体と絶縁体の中間です。もっと言い換えると、普段は電気を流しませんが、加熱等条件がそろうと電気が流れる物体です。

なぜ、条件がそろうと電気が流れるのでしょうか? 今回はそのことを分子軌道法を用いて解説していきます。

今は生活において無くてはならない電気、しかし、電気を流す導体である金属には限りがあります。そのため、半導体の研究が必要不可欠です。もっとも半導体も現在不足していますが…(2026年10月現在)

今回の記事では主に
・半導体
・価電子帯、空の帯、禁制帯、伝導帯
・真性半導体、不純物半導体(p型半導体、n型半導体)
・正孔、ドーパンド、ドーピング
について解説していきます。

参考文献「ベーシックマスター 無機化学」増田 秀樹、長嶋 雲兵 共編

この書籍は簡単すぎず難しすぎない無機化学を全般的に解説しています。

半導体とは?

導体(主に金属)は電気が流れる物体、絶縁体は電気を流さない物体、そして半導体はその導体と絶縁体の中間であり、基本は電気を流さないが、不純物の混入や加熱等、条件がそろえば電気を流す物体です。

金属であるナトリウムNa 3s軌道について分子軌道をみていきましょう。Na原子が1個だけだと軌道、電子は1個だけです。Na原子が2個あると軌道、電子どちらも2個になります。そして、元のエネルギーより低い軌道を結合性軌道、元のエネルギーより高い軌道を反結合性軌道と呼び、電子は低いエネルギー準位である結合性軌道に収容されます。

金属は金属結合によりたくさんの原子が結合しているため、原子の数を無限大にまでとばすと、分子軌道同士が密になって帯(バンド)の様になり、結合性軌道の帯を価電子帯(価電子バンド)、反結合性軌道の帯を空の帯(空のバンド)といいます。

また、価電子帯と空の帯の間の電子が存在できない部分を禁制帯(バンドギャップ)といいます。

図1.ナトリウムNaの分子軌道

電気が流れる仕組みは当然電子の移動であり、電圧をかけられることにより価電子がLUMO辺りに密集した軌道の帯(伝導帯)に励起され電子移動が起こります。

導体は価電子の真上の軌道がガラ空きであり、いともたやすく伝導帯に移動し電子移動がされます。逆に絶縁体は空の帯に移動する必要があり、禁制帯が大きいため移動が困難となり価電子が移動しません。そして、半導体は伝導帯が空の帯にあるところまでは絶縁体と同じですが、禁制帯が低いため条件がそろえば電子移動をさせることができます。

図2.導体、半導体、絶縁体の仕組み

以上が導体と半導体と絶縁体についての解説です。余談ですが、ここで、ダイヤモンドとシリコンについてみていきましょう。ダイヤモンドは全てC-C単結合(結合エネルギー344kJmol-1、結合距離1.54×10-10m)で構成された三次元構造をしており、グラファイトなどのπ電子を持っていません。そのため、絶縁体です。一方、シリコンも全てSi-Si単結合(結合エネルギー177kJmol-1、結合距離2.34×10-10m)で構成された三次元構造をしています。ダイヤモンドほど結合は強くなく、また禁制帯も低いため、熱的に価電子が伝導帯に励起され電流が流れます。よって、シリコンは半導体の材料として使われているのです。

半導体の電流が発生する条件は?

上述の通り、半導体は条件がそろわないと電流は発生しません。ではどうやったら電流が発生するのでしょう?

半導体は基本的には電場をかけても電子が伝導帯に移動しません。しかし、熱や光といった外部からのエネルギーが加わると、電子が伝導帯へ励起しやすくなります。このように不純物を加えずとも外部からのエネルギーにより電流が発生する半導体を真性半導体といいます。また、電子が励起されることにより価電子帯にできた正電荷部位を電子が抜けた孔に例えて正孔といいます。

真性半導体に対し、不純物をわずかに添加し伝導性が向上する半導体を不純物半導体といい、その不純物をドーパンド、不純物を加えることをドーピングといいます。

例として、半導体であるケイ素Siに価電子が1つ少ないホウ素Bを加えます。すると、ホウ素Bが電子アクセプターとして働き、電流が発生しやすくなります。これは価電子帯の真上に電子を受け取れる準位が形成され、伝導帯に電子を励起しやすくなります。この半導体をp型半導体といいます。pはポジティブという意味です。

逆にケイ素Siに価電子が1つ多いリンPを加えます。これはリンPが電子ドナーとして働き、電流が発生しやすくなります。これは伝導帯の真下に電子を提供する準位が形成され、伝導帯に電子を励起しやすくなります。この半導体をn型半導体といいます。nはネガティブという意味です。

それぞれの半導体のエネルギー準位を以下に図示しました。

図3.半導体のエネルギー準位

例

ここで具体例を解説していきます。

酸化インジウム(In2O3)に酸化スズ(SnO2)を約5%ドーピングした酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)をガラスに塗布した透明電極、ITO電極があります。

他にも導電性高分子により電流が発生するプラスティックも開発されています。

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まとめ

・半導体…その導体と絶縁体の中間であり、基本は電気を流さないが、不純物の混入や
     加熱等、条件がそろえば電気を流す物体

・価電子帯(価電子バンド)…結合性軌道の帯

・空の帯(空のバンド)…反結合性軌道の帯

・禁制帯(バンドギャップ)…価電子帯と空の帯の間の電子が存在できない部分

・伝導帯…LUMO辺りに密集した軌道の帯であり、電子移動(電流が発生)する帯

・導体は価電子帯の真上に伝導帯があり励起が容易、半導体は空の帯に伝導帯があり禁制帯が低いため条件がそろえば励起可能、絶縁体は禁制帯が高いため励起不可能

・真性半導体…不純物が無い半導体

・不純物半導体…不純物が存在する半導体(アクセプターをドーピングしたp型半導体、
        ドナーをドーピングしたn型半導体)

・半導体としてITO電極、導電性高分子

以上が分子軌道法を用いた半導体の解説です。当ブログは化学を解説したブログであり、もちろん電磁気学等では違う内容で解説しているかもしれません(電磁気学のことは何もわかりませんが…)。

今回のブログはここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。

プロフィール
ミドリケム

はじめまして。ミドリケムです。
性別:男性
年代:30代半ば
専攻:応用化学、有機化学

大学で応用化学を専攻し、研究室で有機合成をしてきました。
社会人でも転職は2回しましたが、現在でも有機化学をしています。

スキルアップ重視でブログを始めました。もちろん収益化もできたら嬉しいのですが笑

化学の基本的な事から専門的な事まで幅広く取り扱おうと思っています。中には簡単すぎて退屈、難しすぎてわからないと感じる事もあるかと思います。

少しでも化学に興味を持ってくれたらと思っています。疑問やここを解説してほしい、もう少しわかりやすく解説してほしい、などなど些細な事でも構いませんので、何かあればお問い合わせから連絡して下さい♪

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