こんにちは。ミドリケム。
本日は機能性高分子について解説していきます。
そもそもなぜ、高分子(ポリマー)を合成しなければならないのでしょうか?
当然、モノマーが重合しポリマー化することで性質も変わってきます。プラスチック等、素材として用いることも重要ですが、時には外部からの熱、光、圧力、および電気といった刺激に応答して重合や新たな機能を発現する高分子もあります。
こういった高分子を機能性高分子といいます。素材としてだけではなく新たな機能を付与させることも高分子の研究で必要不可欠です。
ではどのような機能があるのでしょうか? 今回はその機能性高分子について解説していきます。
ちなみに、当記事で紹介する機能性高分子はほんの一例です。以下の書籍だけではなく、論文等、探せばたくさん存在します。
当記事では主に
・機能性高分子
・光機能性高分子
・導電性高分子
・熱応答性高分子
について解説していきます。
参考文献「ベーシックマスター 高分子化学」 西久保忠臣 編
この書籍は入門編より詳しく、または難しすぎない内容となっており、今から高分子を学ぼうという方にはオススメです。
光機能性高分子とは?
改めて、機能性高分子とは外部からの熱、光、圧力、および電気といった刺激に応答して重合や新たな機能を発現する高分子です。まずは光について解説していきます。
リソグラフィーとレジスト
光によって溶解性が変わる樹脂を感光性樹脂、もしくは(フォト)レジストと言い、光照射により溶けやすくなる樹脂をポジ型、溶けにくくなる樹脂をネガ型といいます。
これらの樹脂は主にプリント回路作成と半導体集積回路の作製に用いられます。以下に、その過程を図示します。

図1.感光性樹脂によるフォトリソグラフィー過程
レジストに光を照射すると光が当たった部分が光化学反応を起こして、その部分の溶解性が変化し、現像によって画像パターンが得られ、エッチングにより塗布剤を除去するといった過程です。その光化学反応の代表例として、光重合、光架橋、光分解(解重合)、光変性等あります。
基本的には架橋や重合で高分子化することで溶解性が下がるため、光重合、光架橋等がネガ型、光分解(解重合)がポジ型となります。
紫外線硬化樹脂
紫外線硬化樹脂とはその名の通り、紫外線を照射することにより硬化する樹脂です。
これらの材料は紫外線照射によりラジカル重合が開始して硬化する樹脂と、紫外線照射でカチオンが発生する開始剤を用いて硬化する樹脂の2種類があります。
前者は
①アクリル系オリゴマー
②アクリル系反応希釈剤
③光開始剤
④重合禁止剤
からなる1液タイプであり、硬化速度が速いのが特徴です。
一方、後者は多官能性オリゴマー(エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基)と光酸発生剤からなり、空気中の酸素による重合阻害を受けない特徴があります。
導電性高分子とは?
導体と半導体と絶縁体
導電性高分子の解説の前に導体と半導体と絶縁体について分子軌道法を用いて解説していきます。
導体(主に金属)は電気が流れる物体、絶縁体は電気を流さない物体、そして半導体はその導体と絶縁体の中間であり、基本は電気を流さないが、不純物の混入や加熱等、条件がそろえば電気を流す物体です。
金属であるナトリウムNa 3s軌道について分子軌道をみていきましょう。Na原子が1個だけだと軌道、電子は1個だけです。Na原子が2個あると軌道、電子どちらも2個になります。そして、元のエネルギーより低い軌道を結合性軌道、元のエネルギーより高い軌道を反結合性軌道と呼び、電子は低いエネルギー準位である結合性軌道に収容されます。
金属は金属結合によりたくさんの原子が結合しているため、原子の数を無限大にまでとばすと、分子軌道同士が密になって帯(バンド)の様になり、結合性軌道の帯を価電子帯(価電子バンド)、反結合性軌道の帯を空の帯(空のバンド)といいます。
また、価電子帯と空の帯の間を禁制帯(バンドギャップ)といいます。

図2.ナトリウムNaの分子軌道
電気が流れる仕組みは当然電子の移動であり、電圧をかけられることにより価電子がLUMO辺りに密集した軌道の帯(伝導帯)に励起され電子移動が起こります。
導体は価電子の真上の軌道がガラ空きであり、いともたやすく伝導帯に移動し電子移動がされます。逆に絶縁体は空の帯に移動する必要があり、禁制帯が大きいため移動が困難となり価電子が移動しません。そして、半導体は伝導帯が空の帯にあるところまでは絶縁体と同じですが、禁制帯が低いため条件がそろえば電子移動をさせることができます。

図3.導体、半導体、絶縁体の仕組み
以上が導体と半導体と絶縁体についての解説です。余談ですが、ここで、ダイヤモンドとシリコンについてみていきましょう。ダイヤモンドは全てC-C単結合(結合エネルギー344kJmol-1、結合距離1.54×10-10m)で構成された三次元構造をしており、グラファイトなどのπ電子を持っていません。そのため、絶縁体です。一方、シリコンも全てSi-Si単結合(結合エネルギー177kJmol-1、結合距離2.34×10-10m)で構成された三次元構造をしています。ダイヤモンドほど結合は強くなく、また禁制帯も低いため、熱的に価電子が伝導帯に励起され電流が流れます。よって、シリコンは半導体の材料として使われているのです。
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導電性高分子
導電性高分子として挙げられるのが共役二重結合を有する高分子です。これらの高分子は基本的にはグラファイトのようにπ電子の非局在化により導電性を示しますが、これまで合成されてきた高分子のほとんどは半導体が絶縁体です。
しかし、これらの高分子に電子供与体や電子受容体を添加し伝導体に電子を送り込むか価電子帯から電子を抜き取ることにより、導電性を示す高分子になることがあります。
例として、ポリアセチレンにヨウ素I2を添加すると、ポリアセチレンからπ電子が抜き取られ、カチオン化します。この抜き取られた後のプラス電荷部位を電子が抜き取られた孔に例えて正孔といいます。

図4.ポリアセチレンの電子移動機構
このように、電子供与体と電子受容体の間で部分的な電荷移動が起こった会合体を電荷移動錯体といいます。そして、この時の電子供与体や電子受容体をドーパントと呼び、それらを添加して電荷移動錯体をつくることをドーピングといいます。
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ここで、導電性高分子として、主にポリアセチレン系、ポリフェニレン系、および複素環式共役系が挙げられます。構造は以下の通りです。

図5.ポリアセチレン系高分子

図6.フェニレン系高分子

図7.複素環式共役系高分子
熱応答性高分子とは?
最後に熱応答性高分子について解説していきます。熱応答性高分子とは低温では水に溶解するが、加熱すると、ある温度を境に凝集し沈殿する高分子です。そのある温度のことを下限臨界共溶温度(lower critical solution temperture:LCST)といいます。
低温では水に溶解していますが、LCST以上になると凝集し、その際水分子を追い出します。よって、水中であるにもかかわらず、高分子内は疎水場を形成しています。このため、水中での有機物の捕集や有機合成の反応場として用いられます。

図8.熱応答性高分子の凝集
熱応答性高分子はアクリルアミド系の高分子が多いですが、代表的なのはポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)です。モノマーが市販で購入でき、さらにはLCSTが32℃と使い勝手が良いからです。

図9.PNIPAM
LCSTは共重合する相手が変わると変化します(親水性モノマーならLCST上昇、疎水性モノマーならLCST低下)。また、ランダム、ブロック共重合体等、重合の仕方が違うだけでも凝集形態が変わってきます。
まとめ
・機能性高分子…外部からの熱、光、圧力、および電気といった刺激に応答して重合や
新たな機能を発現する高分子
・感光性樹脂 or (フォト)レジスト…
光によって溶解性が変わる樹脂
光照射により溶けやすくなる樹脂をポジ型、溶けにくくなる樹脂をネガ型
・紫外線硬化樹脂…紫外線を照射することにより硬化する樹脂
・半導体…導体と絶縁体の中間であり、基本は電気を流さないが、不純物の混入や加熱等、
条件がそろえば電気を流す物体
・導電性高分子として、主にポリアセチレン系、ポリフェニレン系、および複素環式共役系があり、ドーピングして導電性を上げる必要がある。
・熱応答性高分子…低温では水に溶解するが、加熱すると、ある温度(LCST)を境に凝集して疎水場
を形成する高分子(代表例はPNIPAM)
機能性高分子はもちろん他にもたくさんあります。全て紹介することはさすがに困難です。高分子は共有結合により同じ分子として存在することができます。つまり、ある分子に高分子を付与、あるいはある分子をモノマー化し共重合することで、新たな機能を付与することができます。高分子も奥深いですね。
本日のブログはここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。


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