こんにちは⭐ ミドリケムです。
本日は大学の有機化学で必ずといって良いほど習うGrignard(グリニャール)試薬について解説していきます。
本記事は
・Grignard試薬の性質、合成方法
・Grignard反応(求核反応、塩基性)
・注意点(水との反応性、保護基の活用)
について解説していきます。
Grignard試薬とは?
結論としてどのような試薬か解説しておくと、Grignard試薬は強力な求核試薬、および塩基です。以前の記事では求電子試薬を主軸に解説しましたが、今回は求核試薬の方を主軸に解説していきます。
求電子試薬の関連記事は以下の記事です。


Grignard試薬はVictor Grignard(ヴィクトル グリニャール)氏が発見し、1912年にノーベル化学賞を受賞されています。
ちなみに化学式はR-MgXです。Rは有機構造式、Xはハロゲンで主に臭素Brです。つまり、Grignard試薬は有機化合物にマグネシウムとハロゲン(臭素)がくっついた化合物です。
Grignard試薬の作り方(合成)
Grignard試薬の作り方としては、R-Xの試薬にエーテル溶媒中(ジエチルエーテルやTHF等、エポキシドは不可)、マグネシウムMgと反応させて合成します。例として、ブロモベンゼンと2-クロロブタンから臭化フェニルマグネシウムと塩化sec-ブチルマグネシウムの合成を以下に示します。

図1.Grignard試薬化
上述でXはハロゲンと言いましたが、実際はフッ素FではマグネシウムMgとほぼ反応せず、塩素Clでは臭素Brやヨウ素Iと比べると反応性がやや劣ります。やはり私個人的には臭素Brが一般的によく見られます。
上記の反応では少しだけ熱を与え、その後は反応熱を利用してマグネシウムと反応させます。この際、始めの熱は与えすぎ注意です。理由としては反応が進行しすぎて反応熱が多量に放出してしまうからです。しかも、エーテルはジエチルエーテル(沸点35℃)、THF(沸点66℃)と揮発性溶媒なため、なおさら危険です。
反応の仕組み(求核攻撃)
先程も言いましたが、Grignard試薬は強力な求核試薬であり強塩基です。例として、アルデヒド、ケトンにGrignard試薬を作用させます。Grignard試薬はカルボニル炭素に求核攻撃し、その際、π電子が酸素原子に移動します。その後、水と作用させることでアルコールが生成します。

図2.アルデヒド、ケトンとのGrignard反応
関連記事(カルボニル基の反応)

また、Grignard試薬はエーテルとは反応しませんが、エポキシドのみ例外で反応します。エポキシドは三員環、つまり無理やり曲げられているため、ひずみが強く反応します。エポキシドもケトンと同様にアルコールを生成します。

図3.エポキシドとのGrignard反応
この様にGrignard試薬は本当に反応性が良好です。他にもハロゲン化アルキル等、電子密度が低い炭素に求核攻撃し、CーC結合を簡単に作ることができます。また、ケイ素Siとも反応し、界面活性剤やシランカップリング剤を作ることも可能です。これらの反応はほんの一例です。このため、有機化学の世界では重要な試薬となるわけです。
関連記事(上記:界面活性剤、下記:シランカップリング剤)


参考文献「マクマリー有機化学(上)」J. McMurry 著
Grignard試薬のことについてより詳しく掲載されています。
注意点
このような反応性が良好なGrignard試薬ですが、反応が良過ぎるため欠点もあります。
水との反応性
1つ目は水とも反応性が良好であるということです。Grignard試薬は強塩基でもあるため、水分子からプロトンを引っこ抜きます。
それは有機溶媒中に存在する微量な水分とも反応します。どんなに疎水性が強い溶媒でも空気中の水分子が入り込むため、万物の溶媒には必ず水が含まれています。そのため、使用前には溶媒は蒸留して水分を追い出し、空気と触れさせずに窒素N2、アルゴンAr置換する必要があります。
他にも、器具の表面にも空気と触れている以上、必ずといっていい程(目視で確認できなくても)表面に水が付着しています。真空乾燥等で水分子を取り除き、これも窒素N2、アルゴンAr置換する必要があります。
さらに言うと、空気中との水分子とも反応します。そのため、空気と触れさせる時点でNGです。
Grignard試薬は実験器具にMgを加えて真空乾燥し(できればヒートガンで加熱しながら)、蒸留したエーテル(できればNaを加えて十分に還流後、蒸留)を加えた後、ハロゲン化試薬を加えてGrignard試薬化し、精製せずすぐに求電子試薬と反応させることが鉄則です。もちろん、この作業中に空気と触れさせてはいけません。少々面倒ではありますが…
保護基の導入
2つ目は反応してほしくない置換基にも反応してしまうことです。例えば3-ブロモ-1-プロパノールをGrignard試薬化し、アセトアルデヒドと反応させるとします。3-ブロモ-1-プロパノールをMgと反応させた後、ヒドロキシ基とすぐに反応してしまいます(塩基性が強いため、すぐにプロトンを引っこ抜く)。そのため、Grignard試薬として維持することが難しく、アセトアルデヒドと反応させることは難しいです。

図4.3-ブロモ-1-プロパノールのGrignard試薬化(実際は維持できない)
この場合、ヒドロキシ基を保護する必要があります。方法としては、トリエチルアミンといった第3級アミンでヒドロキシ基のプロトンを引っこ抜き、クロロトリメチルシランに求核攻撃させることで、トリメチルシリル(TMS)基を導入します。これを保護基といいます。この保護基はGrignard試薬と反応しないため、安定してGrignard試薬化できます。その後、Grignard反応し、最後に酸性水溶液中で脱保護することにより、ヒドロキシ基に戻します。

図5.保護基を利用した3-ブロモ-1-プロパノールのGrignard試薬化、および反応
保護基の利用により、ヒドロキシ基のまま、Grignard反応ができました。
参考文献「マクマリー有機化学(中)」J. McMurry 著
アルコールの保護基のことについて詳しく記載されています。
まとめ
・Grignard試薬はR-MgX(Xはハロゲン、主にBr)の総称であり、求核性、強塩基試薬
・合成方法として、エーテル溶媒(エポキシド以外)中にR-Br試薬とMgを作用させる。その際、加熱するが、その後に多量の発熱反応があるので、加熱し過ぎに注意
・Grignard反応の一例として、アルデヒド、ケトン、およびエポキシドと反応し、アルコールになる。
・水とも反応性が良好なため、溶媒の蒸留、ガラス器具の真空乾燥、N2、Ar置換が必要。空気とも触れさせるのもNG。
・一部の試薬では保護基を利用して反応させる必要がある。
本日のブログはここまで!! 最後まで読んで頂きありがとうございました!!


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