芳香族求電子置換反応とは? Friedel-Crafts(フリーデル-クラフツ)反応についてわかりやすく解説

有機化学

こんにちは。 ミドリケムです。

本日は芳香族求電子置換反応についてわかりやすく解説していきます。

芳香族って安定化しているイメージですよね? その芳香族を反応させるということは、一度不安定化させてから反応を進めるということです。

どうやって反応させるのでしょうか? 詳しく解説していきます。

本記事では
・芳香族求電子置換反応
・ベンゼンのニトロ化
・ベンゼンのスルホン化
・Friedel-Crafts反応
について詳しく解説していきます。

芳香族求電子置換反応とは?

結論から言うと、芳香族求電子置換反応とはベンゼンといった電子豊富な芳香族がカチオンの様な電子が不足した求電子試薬に攻撃して水素と置換する反応です。

しかし、芳香族はかなり安定しており、簡単には反応は起こりません。そこで、触媒(ルイス酸)を用いて反応を促進させます。

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例えば、ベンゼンに臭素Br2を置換するとします。芳香族はかなり安定しているため、臭素を添加するだけでは反応は起こりません。そのため、三臭化鉄(ルイス酸)を加え臭素の一部を正に分極させます(鉄Feの空軌道に臭素Brが配位結合)。すると、反応の活性化エネルギーが低下し、ベンゼンが正に分極された臭素に求核攻撃をし、カルボカチオン中間体が形成します。その後、塩基がプロトンを引っこ抜いて臭素が無事置換されたブロモベンゼンが生成されます。

図1.芳香族求電子置換反応によるブロモベンゼンの生成

この様に、ルイス酸を加えて置換させたい部位を正に分極させ、芳香族の求核攻撃をしやすくして置換させる反応を芳香族求電子置換反応といいます。

エネルギー順位図を描くと以下の通りです。ルイス酸が⊿E:活性化エネルギーを低下させて反応を促進させてくれています。なお、置換反応ではなく臭素が2つくっついた付加反応は⊿G:ギブス自由エネルギーが正であり、反応前のベンゼン+臭素よりエネルギー順位が高いため、生成しません。

図2.芳香族求電子置換反応のエネルギー順位図

なお、ブロモベンゼンはGriginard試薬として有名な臭化フェニルマグネシウムの原料です。そのため、需要は高いです。

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また、今回は臭素Br2を例に解説しましたが、塩素Cl2、三塩化鉄FeCl3を用いるとクロロベンゼンが生成します。

ベンゼンのニトロ化

作用する物質を正に分極、ないしカチオン化することで芳香族求電子置換反応が進むことを学んだところで、ベンゼンのニトロ化について解説していきます。高校化学でも習った通り、ニトロベンゼンは硝酸、硫酸の混合物により以下の様に生成します。

図3.ベンゼンのニトロ化反応

反応機構としては硫酸のプロトンが硝酸の水酸基に結合し、水として脱離(硫酸は脱水剤)することでニトロイルイオンが生成します。これはカチオンなので、ベンゼンが求核攻撃し、カルボカチオン中間体が生成します。その後、水などが塩基としてプロトンを引っこ抜くことでニトロベンゼンが生成します。

図4.ベンゼンのニトロ化反応機構

ベンゼンのスルホン化

次に、ベンゼンのスルホン化について解説していきます。ベンゼンスルホン酸は発煙硫酸(三酸化硫黄、硫酸の混合物)により以下の様に生成します。

図5.ベンゼンのスルホン化反応

反応機構としては、硫酸のプロトンが三酸化硫黄のアニオンにくっつくことで三酸化硫黄をカチオン化させます。その後はベンゼンが求核攻撃してカルボカチオン中間体が生成し、塩基がプロトンを引っこ抜くことでベンゼンスルホン酸が生成します。

図6.ベンゼンのスルホン化反応機構

ここで要注意なのはスルホン化反応は可逆反応です(矢印も⇆)。スルホン化は強酸中でよく行われますが、脱スルホン化は加熱した希酸水溶液中で行われることが多いです。

ここまで、ニトロ化、スルホン化について解説しましたが、芳香族に既に置換基が導入されていた場合、オルト、メタ、パラ位配向性等、変わってきます。

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Friedel-Crafts(フリーデル-クラフツ)反応

ルイス酸によってカチオン化した後に芳香族に置換することを理解した所で、Friedel-Crafts(フリーデル-クラフツ)反応について解説していきます。Friedel-Crafts反応とは塩化アルミニウムAlCl3をルイス酸として芳香族求電子置換を行う反応です。この反応名は発見したシャルル・フリーデル(Charles Friedel)さんとジェームズ・メイソン・クラフツ(James Mason Crafts)さんからつけられています。

Friedel-Craftsアルキル化反応

フェノールを合成するのに必要なクメン(イソプロピルベンゼン)を例に解説していきます。クメンはベンゼンと2-クロロプロパンが塩化アルミニウムを触媒として反応して生成します。

図7.Friedel-Crafts反応によるクメンの生成

反応機構として、塩化アルミニウムの空軌道に塩素Clを配位させ、基質をカチオン化させます。その後は同様にベンゼンが芳香族求電子置換反応してイソプロピル基が置換し、プロトンがクロロイオンClによって引っこ抜かれてクメンが生成します。

図8.Friedel-Crafts反応機構

上記の反応はFriedel-Craftsアルキル化反応です。この反応は限界があります。

1つ目はハロゲン化アリールやハロゲン化ビニルとは反応しないことです。アリール型、およびビニル型カルボカチオンはエネルギーが非常に高いため、Friedel-Crafts反応の条件下では反応しません。

図9.ハロゲン化アリールおよびハロゲン化ビニル

2つ目は芳香族に電子吸引基や塩基性アミノ基が置換されている場合にもFriedel-Crafts反応は起こりません。前者は芳香族の電子が吸引されているため芳香族の求核性が下がり、後者はプロトン化されてしまうため触媒が再生しにくいことが理由です。

図10.Friedel-Crafts反応が起こらない芳香族

3つ目は最初の置換が起きた後、反応が止めるのが難しいことです。最初のアルキル基が芳香族に置換された後、第二の置換が促進されることがあります。例えば、ベンゼンと1等量の2-クロロ-2-メチルプロパンとの反応では主生物としてp-ジ-tert-ブチルベンゼンが生成し、副生成物として少量のtert-ブチルベンゼンと未反応のベンゼンが得られます。モノ体が主生成物にしたい場合、ベンゼンを多量に加える必要があります。

図11.ベンゼンと2-クロロ-2-メチルプロパンとのFriedel-Crafts反応

4つ目は反応の途中でヒドリド移動、アルキル基移動が起こることです。カルボカチオンの安定性は3級>2級>1級です。実際、ベンゼンと1-クロロブタンを反応させると、ヒドリド移動が起こり生成物の65%は転移しています。

図12.ベンゼンと1-クロロブタンとのFriedel-Crafts反応

同様に、ベンゼンと1-クロロ-2,2-ジメチルプロパンを反応させると、アルキル基移動します。

図13.ベンゼンと1-クロロ-2,2-ジメチルプロパンとのFriedel-Crafts反応

Friedel-Craftsアシル化反応

芳香族が塩化アルキルを用いてアルキル化されるのと同様に、芳香族は塩化アルミニウムAlCl3の存在下にカルボン酸塩化物RCOClにより、Friedel-Craftsアシル化反応が起こります。例えば、ベンゼンと塩化アセチルとの反応はアセトフェノンを生成します。

図14.ベンゼンと塩化アセチルとのFriedel-Crafts反応

また、塩化アセチルではなく、無水酢酸とも反応し同様にアセトフェノンを生成します。これは酸無水物も反応性に富んでいるため起こります。

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また、アシル化反応ではアシルカチオンが生成されますが、これは転移は起きません。

まとめ

・芳香族求電子置換反応…電子豊富な芳香族が電子が不足した求電子試薬に攻撃して水素と置換する反応
・その際、付加反応は起こらない(ギブス自由エネルギーが高いため)
・ベンゼンのニトロ化は硫酸によって硝酸からニトロイルイオンが生成し、芳香族求電子置換反応が起こり生成する
・ベンゼンのスルホン化は硫酸によって三酸化硫黄をカチオン化し、芳香族求電子置換反応が起こり生成する
・Friedel-Crafts化反応は塩化アルミニウムAlCl3から基質をカチオン化して芳香族求電子置換反応が起こる反応
・Friedel-Crafts化反応は以下の限界がある
  ・ハロゲン化アリールおよびハロゲン化ビニルはカチオン化されない
  ・電子吸引基や塩基性アミノ基が置換されている芳香族は反応しない
  ・モノ体以外にもジ体等が起こる
  ・カルボカチオンが転移する(アシル化は起きない)

参考文献「マクマリー有機化学(中)」J. McMurry 著
芳香族求電子置換反応以外にも芳香族の反応について詳しく記載されています。芳香族の反応について詳しく知りたい方はオススメです。

本日のブログはここまで!! 最後まで読んで頂きありがとうございました!!

プロフィール
ミドリケム

はじめまして。ミドリケムです。
性別:男性
年代:30代半ば
専攻:応用化学、有機化学

大学で応用化学を専攻し、研究室で有機合成をしてきました。
社会人でも転職は2回しましたが、現在でも有機化学をしています。

スキルアップ重視でブログを始めました。もちろん収益化もできたら嬉しいのですが笑

化学の基本的な事から専門的な事まで幅広く取り扱おうと思っています。中には簡単すぎて退屈、難しすぎてわからないと感じる事もあるかと思います。

少しでも化学に興味を持ってくれたらと思っています。疑問やここを解説してほしい、もう少しわかりやすく解説してほしい、などなど些細な事でも構いませんので、何かあればお問い合わせから連絡して下さい♪

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