こんにちは。ミドリケムです。
今回は前回の記事で紹介したペリ環状反応の一つ、環化付加反応であるDiels-Alder反応について解説していきます。
復習として、ペリ環状反応とはπ電子が環状の遷移状態を経由する協奏過程でしたね。その中でも、付加環化反応は二つの不飽和な分子が互いに結合して、一つの環状生成物を与える反応です。そして、共役ジエンとアルケンとが環化する反応をDiels-Alder反応といいます。
前回の記事(ペリ環状反応)

今回はそのDiels-Alder反応について詳しく解説していきます。
今回の記事では主に
・Diels-Alder反応
・ジエノフィルの種類
・cis-trans異性体
・endo,exo異性体
・光禁制
について解説していきます。
参考文献「マクマリー有機化学(上)」J. McMurry 著
Diels-Alder反応とは?
改めて、Diels-Alder反応とはアルケンの二つのp軌道とジエンのC1とC4の二つのp軌道が正面から重なることによって起き、一度に二本のC-C結合ができる反応です。
この反応を発見したOtto Diels氏とKurt Alder氏は1950年にノーベル化学賞が授与されました。
Dlels-Alder反応の遷移状態では、アルケンの二つの炭素とジエンのC1とC4がsp2からsp3に再混成して二つの新しい単結合ができます。ジエンのC2とC3はsp2混成のまま残り、生成物の新しい二重結合となります。

図1.Diels-Alder反応
関連記事(sp2、sp3混成軌道)

ジエノフィルの種類
ここで、アルケンはジエンを好むものという意味で、ジエノフィルと呼称されます。ジエンはπ共役のため、電子が豊富です。つまり、ジエノフィルに電子吸引性基があると反応が進行します。図1ではエチレンを描きましたが、エチレンはあまりDiels-Alder反応には不向きです。実際は、プロペナール(アクロレイン)、プロペン酸エチル(アクリル酸エチル)、無水マレイン酸、ベンゾキノン、プロペンニトリル(アクリロニトリル)、およびプロピン酸メチルが用いられます。

図2.ジエノフィルの種類
関連記事(π共役)

立体化学
cis-trans異性体
Diels-Alder反応の最も重要な特徴として、立体特異性が挙げられます。つまり、1種類の立体異性体が選択的に得られるということです。
具体例として、1,3-ブタジエンとそれぞれ、cis-trans体の2-ブテン酸メチルを反応させると、生成物もcis-trans体の立体構造が変わることなく生成します。つまり、ジエノフィルの立体構造が守られたまま反応するということです。

図3.1,3-ブタジエンとcis-trans体の2-ブテン酸メチルとのDiels-Alder反応
endo、exo体
Diels-Alder反応の立体化学の2番目の特徴として、速度論的にはendo体、熱力学的にはexo体が生成するということです。以下に示すように、大きい架橋に対してシン(シス)にある時endo体、大きい架橋に対してアンチ(トランス)である時exo体といいます。

図4.endo体、exo体
以下の図の様に、ジエンとジエノフィルが上下で重なる時、それぞれのp軌道が重なり合うためDiels-Alder反応が進行します。

図5.Diels-Alder反応(endo,exo体)
また、エネルギー推移図を以下に示します。基本的には速度論的に優位(活性化エネルギーが低い)endo体が優位に生成しますが、反応に十分な熱を加えると、熱力学的に優位(ギブス自由エネルギーが低い)exo体が優位に生成します。

図6.エネルギー推移図(endo,exo体)
しかし、原料にもよりますが、あまりにも熱が強すぎると逆反応(逆Diels-Alder反応)が優位となり、反応が起こらない、あるいは収率が低い場合があります。ほどよい熱が良いというわけですね。
関連記事(ギブス自由エネルギー)

光禁制
最後にDiels-Alder反応の光禁制について解説していきます。
[4+2]π電子の付加環化反応であるDiels-Alder反応はジエンの基底状態のLUMOとアルケンの基底状態のHOMOはスプラ形であるため(ジエンの基底状態のHOMOとアルケンの基底状態のLUMOでも同様にスプラ形)反応します。
しかし、光化学反応では片方の分子が励起してアンタラ形となり、ジエン、およびアルケンは鎖が短くねじれることが困難です。よって、Diels-Alder反応は光禁制です。

図7.Diels-Alder反応の光禁制
関連記事(ペリ環状反応)

まとめ
・Diels-Alder反応…
アルケンの二つのp軌道とジエンのC1とC4の二つのp軌道が正面から重なることに
よって起き、一度に二本のC-C結合ができる反応
・ジエノフィル…電子吸引性基があると反応が優位に進行
・ジエノフィルの立体構造(cis/trans)が守られたまま反応
・endo体は速度論的、exo体は熱力学的に優位、基本的にはendo体が起こる
・Diels-Alder反応は光禁制
以上、ペリ環状反応の一部であるDiels-Alder反応の解説でした。極性反応、ラジカル反応に比べて影が薄い反応ですが、一度に二つの結合が生成する重要な反応のため、この様な反応もあるのだと頭の片隅にでも入れておきましょう。
本日のブログはここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。


コメント