こんにちは。ミドリケムです。
今回はペリ環状反応について解説していきます。
皆さんは有機化学の反応といえば何を思い浮かべますが? ほとんどの人は極性反応を思い浮かべると思います。また、不対電子によるラジカル反応もありますね。
その中でも、第三の反応としてペリ環状反応はかなり影が薄いです。しかし、重要な反応のため、しっかり学習していきましょう。
当記事では主に
・ペリ環状反応
・電子環状反応
・同旋的、逆旋的
・環化付加反応(Diels-Aider反応)
・スプラ形、アンタラ形
・シグマトロピー転位(Cope転位、Claisen転位)
について解説していきます。
参考文献「マクマリー有機化学(下)」J. McMurry 著
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参考文献「「量子化学」のことが一冊でまるごとわかる」齋藤勝裕 著
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ペリ環状反応とは?
結論から言うと、ペリ環状反応とはπ電子が環状の遷移状態を経由する協奏過程です。全ての結合の変化が1段階で起こり、中間体を生成しません。
そして、ペリ環状反応は以下の反応があります。
・電子環状反応
・環化付加反応(Diels-Aider反応)
・シグマトロピー転位(Cope転位、Claisen転位)
・キレトロピー反応(SO₂付加・脱離)
・エン転位
この中でも当記事では電子環状反応、環化付加反応(Diels-Aider反応)、およびシグマトロピー転位について解説していきます。
電子環状反応とは?
同旋的、逆旋的
と、説明しましたが、ぱっとイメージがつきませんよね? 始めに一つ目のペリ環状反応として、電子環状反応の反応機構を見せます。
以下のように、2つの二重結合(π電子が4つ)のうち、π電子を1つずつ出し合い新たにσ結合を形成し、残った2つのπ電子同士が(場合によっては別の二重結合のπ電子と)新たなπ結合を形成します。以下のような共役トリエン、共役ジエンはそれぞれシクロヘキサジエン、シクロブテンへと変化します。

図1.ペリ環状反応
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ここで、どちらも可逆反応でありますが、シクロブテンの方はひずみが強いため、開環物質の方が優位です。
ここで、(2E,4Z,6E)-2,4,6-オクタトリエンを加熱するとcis体の生成物を得ますが、紫外光(UV)を照射、つまり光分解すると、trans体を得ます。つまり、紫外光照射により、立体が反転して反応します。これは(2E,4E)-2,4-ヘキサジエンでも同様のことが言えます。

図2.加熱および紫外光照射によるペリ環状反応
結合が生成するためには、両端のπローブが結合性相互作用に都合がよい(正のローブが正のローブと重なるか、または負のローブが負のローブと重なる)ように回転する必要があります。
同符合のローブが分子の同じ側にある場合は、二つの軌道は互いに異なる方向、すなわち一方の軌道が時計回りで、もう一方が反時計周りで、もう一方が反時計周りに回転しなければなりません。このような動きは逆旋的といいます。
逆に、同じ符合のローブが分子の反対側にあるときは二つの軌道は同じ方向、ともに時計回りか反時計周りに回転する必要があります。このような動きは同旋的といいます。

図3.ローブの逆旋的、同旋的回転
ポリエンのHOMO、LUMO
同旋的か逆旋的、どちらが起こるかを判定するには分子軌道によって決まります。主にフロンティア軌道(HOMO、LUMO)で決まります。
ここで、HOMOは電子が占有する最もエネルギーが高い軌道であり、LUMOは電子が占有していない最もエネルギーが低い軌道です。光照射により電子がHOMOからLUMOへ移動、つまり励起されます。
関連記事(HOMO、LUMO)

ここで、共役ジエン、トリエンのHOMO、LUMOの軌道図を示しておきます。この図をよく覚えておいてください(特に両端のp軌道)。

図4.ジエン、トリエンのHOMO、LUMO
熱による電子環状反応
熱による電子環状反応は光を照射しないため、HOMO軌道で閉環、および開環します。図4の共役トリエン、および共役ジエンのHOMOから、オクタトリエンは逆旋的、ヘキサジエンは同旋的に閉環、および開環します。詳しくは以下の図の通りです。

図5.オクタトリエンの熱による逆旋的電子環状反応

図6.ヘキサジエンの熱による同旋的電子環状反応
光化学的電子環状反応
ポリエンに紫外光を照射すると、電子1個がLUMO軌道に励起され閉環、および開環します。図4の共役トリエン、および共役ジエンのLUMOから、オクタトリエンは同旋的、ヘキサジエンは逆旋的に閉環、および開環します。詳しくは以下の図の通りです。

図7.オクタトリエンの光化学的同旋的電子環状反応

図8.ヘキサジエンの光化学的逆旋的電子環状反応
この様に、熱、および光化学的電子環状反応は前者ではHOMO、後者はLUMOで反応します。同旋的、および逆旋的かは以下の表の通りとなります。

表1.電子環状反応の立体化学の法則
付加環化反応(Diels-Alder反応)
二つ目のペリ環状反応として、付加環化反応があります。付加環化反応は二つの不飽和な分子が互いに結合して、一つの環状生成物を与える反応です。電子環状反応と違うのは、二つの分子が登場することです。
有名なのが、ジエン(4π電子)とジエノフィル(2π電子)との間で起こり、シクロヘキセン誘導体を生成するDiels-Alder反応です。Diels-Alder反応は室温かまたはそれより少し高い温度で進行し、置換基の立体化学に関しても立体特異的です。
以下の図の様に、1,3-ブタジエンをマレイン酸ジエチル、およびフマル酸ジエチルと反応させると、前者はシス体、後者はトランス体を生成します。

図9.1,3-ブタジエンとマレイン酸ジエチル、およびフマル酸ジエチルとのDiels-Alder反応
Diels-Alder反応はジエン(4π電子)とジエノフィル(2π電子)との間で起こるため、別名[4+2]π電子の付加環化反応とも言います。では、[2+2]π電子の付加環化反応を見ると、二つのエチレン(アルケン)は加熱しても反応は起こらないが、光化学的反応ではシクロブタンが生成します。

図10.アルケンの光化学的付加環化反応
今回も解説の前に共役ジエンとアルケンのHOMO、LUMOの図を記載しておきます。それぞれの分子の両端のp軌道をよく覚えておいてください。

図11.ジエン、アルケンのHOMO、LUMO
付加環化反応ももちろんπローブのことを考えなければなりません。二つの分子のそれぞれの両端のp軌道がうまく重なることができれば反応が起こります。この形をスプラ形といいます。一方、うまく重なることができない場合、他方がねじれる必要があります。この形をアンタラ形といいます。

図12.スプラ形、アンタラ形
付加環化反応は最も束縛が緩いHOMOの電子が他方の分子の空軌道であるLUMOへと電子を供与する反応です。よって、電子環状反応との違いはHOMOの分子とLUMOの分子との二つの分子のやり取りに注目しなければなりません。
[4+2]π電子の付加環化反応(Diels-Alder反応)について解説していきます。ジエンの基底状態のLUMOとアルケンの基底状態のHOMOはスプラ形です(ジエンの基底状態のHOMOとアルケンの基底状態のLUMOでも同様にスプラ形)。よって、スプラ形として反応します。
ちなみに、光化学反応では片方の分子が励起してアンタラ形となって反応するはずですが、ジエン、およびアルケンは鎖が短くねじれることが困難です。よって、[4+2]π電子の付加環化反応(Diels-Alder反応)は光禁制です。

図13.[4+2]π電子の付加環化反応(Diels-Alder反応)
次に、[2+2]π電子の付加環化反応について解説していきます。ジエンの基底状態のLUMOとアルケンの基底状態のHOMOはアンタラ形です。もちろん、アルケンは鎖が短いのでねじれることは困難であり、反応は起こりません。
逆に、光化学反応では、片一方のアルケンが励起し、スプラ形になります。よって、反応が起こります。そのため、図10のアルケンの付加環化反応では熱では反応は起こりませんが、光照射下では反応が起こります。

図14.[2+2]π電子の付加環化反応
付加環化反応でも立体化学の法則を以下の表に示します。

表2.付加環化反応の立体化学の法則
また、今回紹介したDiels-Alder反応については次回の記事でもう少し詳しく解説します。
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シグマトロピー転位とは?
最後のペリ環状反応として、シグマトロピー転位があります。シグマトロピー転位とはσ結合した原子や置換基がπ電子系を通って一つの場所から別の場所へ移動する反応です。つまり、出発物の1本のσ結合が切れてπ結合が動き、生成物では新しい1本のσ結合ができます。以下の図の様に、シグマトロピー転位は[1,5]転位と[3,3]転位があります。

図15.シグマトロピー転位
[1,5]、[3,3]は転位の種類を示しています。前者は移動が水素の1位とペンタジエニル基の5位とで起こるため、後者はアリル基の3位とビニルエーテル基の3位とで起こるためです。
シグマトロピー転位にもアンタラ形、スプラ形があり、π系の面から反対方向に転位する場合はアンタラ形、同じ方向で転位する場合はスプラ形です。

図16.スプラ形とアンタラ形のシグマトロピー転位
シグマトロピー転位でも立体化学の法則を以下の表に示します(といっても付加環化反応と同じですが…)。

表3.シグマトロピー転位の立体化学の法則
シグマトロピー転位は[1,5]水素移動、Claisen転位、およびCope転位があります。
[1,5]水素移動
5-メチル-1,3-シクロペンタジエンは室温で速やかに1-メチル、2-メチル、5-メチル置換生成物の混合物を与えます。
他にも、5,5,5-トリジュウテリオ-(3Z)-1,3-ペンタジエンを加熱すると、1位と5位に重水素が分散します。
これらは全てスプラ形で起こります。

図17.[1,5]水素移動
Cope転位、Claisen転位
1,5-ヘキサジエン骨格をもつ分子が、[3,3]-シグマトロピー転位により六員環様の遷移状態を経て、炭素骨格を組み替えるCope転位、アリルアリールエーテル、およびアリルビニルエーテル構造を持つ化合物がγ,δ-不飽和カルボニル化合物に転位するClaisen転位があります。

図18.Cope転位、Claisen転位
これらもスプラ形を経由して反応します。
まとめ
・ペリ環状反応…π電子が環状の遷移状態を経由する協奏過程(中間体生成しない)
電子環状反応
環化付加反応(Diels-Aider反応)
シグマトロピー転位(Cope転位、Claisen転位)
キレトロピー反応(SO₂付加・脱離)
エン転位
・電子環状反応
…2つの二重結合(π電子が4つ)のうち、π電子を1つずつ出し合い新たにσ結合を形成し、残った2つのπ電子同士が(場合によっては別の二重結合のπ電子と)新たなπ結合を形成
フロンティア軌道(HOMO、LUMO)によって、熱、および光化学的反応が決まる。
・付加環化反応…二つの不飽和な分子が互いに結合して、一つの環状生成物を与える反応
Diels-Alder反応
フロンティア軌道(HOMO、LUMO)によって、熱、および光化学的反応が決まる。
・シグマトロピー転位…σ結合した原子や置換基がπ電子系を通って一つの場所から
別の場所へ移動する反応
[1,5]水素移動、Cope転位、Claisen転位

表4.ペリ環状反応の立体化学の法則
本日のブログはここまで。 最後まで読んで頂きありがとうございました。


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