こんにちは⭐ ミドリケムです。
本日は前回のブログでも解説したπ共役系についてもう少し解説していきます。今回のブログは前半はπ共役系の解説、後半はそれを利用した導電性プラスチックの解説をしていきます。
前回のブログはこちら↓↓

π共役系はなぜ安定?
単結合と二重結合が交互に連なりp軌道が広がったことをπ共役系と呼びましたね。前回は環状、つまり芳香族の事を解説しましたが、π共役系はもちろん鎖状でも影響します。
ここでよく例にとられるのが1,3-ブタジエンです。二重結合の無いn-ブタンと比較すると、二重結合はもちろん、中央に存在するC-C単結合もn-ブタンより安定しています。実際、1,3-ブタジエンの単結合距離は147ppmなのに対し、ブタンの単結合は153ppmと、前者の方が6ppm短いです。つまり、前者の方が強力な結合で安定しています。

原子価結合法
原子価結合法で解説すると、安定性の違いは混成軌道の違いによります。1,3-ブタジエンの炭素はsp2混成軌道、n-ブタンの炭素はsp3混成軌道であり、それらの混成軌道の重なりによりσ結合は生まれます。
また、s軌道は原子核を中心に存在し、p軌道は原子核を節に存在しています。
そして、sp2混成軌道は1つのs軌道と2つのp軌道から成っているためs性は1/3、sp3混成軌道は1つのs軌道と3つのp軌道から成っているためs性は1/4です。
つまり、s性の高いsp2混成軌道の方が原子核の近くに存在しているため、結合距離が短く強力になります(電子は陽子に強く引っ張られているため)。
混成軌道に関しては以下のブログで詳しく解説しています↓↓

分子軌道法
1,3-ブタジエンのp軌道のみの分子軌道法は以下の通りです。芳香族の時と同様、π電子が結合性軌道にスッポリ収容されます。
最も低いエネルギーを見ると、中央のCーC結合にもp軌道が広がっています。つまり、構造式ではわかりませんが、中央のCーC結合にも少しπ結合性を持っているというわけです。もちろん、二つ目の結合性軌道は真ん中に節をもっているため、完全にπ結合性を持っているわけではありませんよ。
また、エネルギーが高くなるにつれて、節が増えることも注目の一つですね。

以上の原子価結合法、分子軌道法の二つの結合理論により、1,3-ブタジエンは安定化しているというわけです。
導電性プラスチックとは?
最後に導電性プラスチックについて解説していきます。これを聞いてプラスチックって電気が流れるの?と疑問に感じられた方もいらっしゃると思います。もっともなご意見です。
ですが、実際に電気が流れるプラスチックがあるのです。これはπ共役系に大いに関係してきます。それを開発したのがアラン・ヒーガー(Alan Heeger)先生、アラン・マクダイアミッド(Alan Mac Diamid)先生、そして日本人である白川英樹先生です。この3人の方々は導電性プラスチックの発見により、2000年にノーベル化学賞を受賞されました。
電気が流れるプラスチックの代表として、ポリアセチレンです。ポリアセチレンはチーグラー・ナッタ触媒を用いて合成された高分子です。以下に反応式を示しておきます。また、高分子に関しては過去のブログでも解説しています。


複数のアセチレンを重合して完成したポリアセチレンはまさに巨大なπ共役系です。
ところで、電気が流れる、つまり電流を起こす原理ってなんでしたっけ? そうです。電子が動くことが電流でしたね(電流と電子の流れる方向は逆ですが…)。金属は自由電子が原子核の周りを自由に動くことができ、電圧がかかることで一方方向に電子が動くため電流が発生しました。
それじゃあポリアセチレンもp軌道が広がりπ電子が自由自在に動くことができるから電流が発生する…とはいきませんでした。やはり簡単には電流は発生しない様です。
ここで救世主として登場するのがヨウ素I2です。ヨウ素はハロゲンであり、酸化力が強く自分はヨウ素イオンI–に還元されます。
つまり、アセチレンからπ電子を引っこ抜き、カチオン化させます。すると、そのカチオンにπ電子が移動し(+とーはクーロン力により引力が発生するため)、電流が発生するのです。

上図でいうと、カチオンは右に、π電子は左に移動しています。電子の移動、つまり電流が発生したということです。正電荷の動く方向が電流であるため、上図では電流の向きは右方向となります。
ちなみに、ヨウ素を加えることで電気伝導度は約10億倍になったそうです。このように、少し不純物を加えることで、物性を大きく変えることをドーピングと呼びます。
また、この時のプラス電荷を電子が抜き取った後の孔に例えて正孔と呼びます。
以上が、ポリアセチレンですが、他にも導電性プラスチックはあります。ポリピロール、PEDOTです。構造式を以下に示します。

終わりに
以上が導電性プラスチックでした。この導電性ポリマーは以前解説したリチウムイオン電池にも使用されています。

参考文献「マクマリー有機化学(上)」J. McMurry 著
有機化学をメインに記載されています。
参考文献「「量子化学」のことが一冊でまるごとわかる」齋藤勝裕 著
量子化学をメインに記載されています。
参考文献「ノーベル化学賞に輝いた研究のすごいところをわかりやすく説明してみた」山口 悟 著
導電性プラスチックのことについて詳しく記載されています。
本日のブログはここまで!! 最後まで読んで頂きありがとうございました!!


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