こんにちは⭐ ミドリケムです。
本日はハーバー・ボッシュ法について解説していきます。高校化学の始めに習う反応なので覚えている方もいらっしゃるかと思います。それほど重要な反応なのです。
今回の参考文献は以下の書籍です。専門的に解説しているのは「ベーシックマスター無機化学 増田秀樹・長嶋雲兵 共編」であり、もう少しわかりやすく解説しているのが「ノーベル化学賞に輝いた研究のすごいところをわかりやすく説明してみた 山口悟 著」です。↓↓
ハーバー・ボッシュ法とは?
ハーバー・ボッシュ法とは窒素N2と水素H2から四酸化三鉄Fe3O4を触媒としてアンモニアNH3を合成する手法です。反応式は以下の通りです。
N2+3H2→2NH3
アンモニアって覚えていますか?刺激臭であり有毒です。人間の体内にもタンパク質等を分解して発生し、肝臓で尿素へと無害化し、体内から放出します。
えっじゃあ合成したら駄目じゃん💦 と思いますよね。しかし、このアンモニアを合成することが人類にとってとても重要なことであり、この反応を発見したフリッツ・ハーバーさんは1918年に、この反応を工業化へと繋げたカール・ボッシュさんは1931年にノーベル化学賞を受賞しています。
なぜ、アンモニアが必要なのか?それは食糧難を救ったからです。
どういうこと? と思いますよね。実はアンモニアは肥料として利用できるのです。肥料三大元素としてカリウムK、リンP、そして窒素Nです。そして空気中に存在する窒素N2は構造で言うとN≡Nと三重結合をしています。これはものすごく強力であり、この状態では他の物質と反応しません。言い換えると、肥料として使用できません。結合を解離するには945kJ/mol(1molに対して945kJ、つまり945000J)のエネルギーが必要です。つまり、窒素自体は空気中に大量に存在していますが、これを解離して肥料として使用することは困難であるということです。
フリッツ・ハーバーさんの功績とは?
18世紀に始まった産業革命以降、人口が急増してますますます食料不足が懸念されました。しかし、自然界に存在する肥料には限度があり、使い尽くされる状況にまで追い込まれました。
これを機に人工的に肥料を作り出そうという試みがされました。そこで、アンモニアを人工的に合成し、そこから肥料へと変換しようと様々な研究がされました。肥料は硫酸アンモニウム(NH4)2SO4、硝酸アンモニウムNH4NO3、尿素NH2CONH2等です。
しかし、先程言いました様に、窒素分子の解離は並大抵のことではできません。それを成し遂げたのがフリッツ・ハーバーさんです。ハーバーさんは1908年にオスミウムOsという金属を触媒として、アンモニアの合成に成功されました。それでも、温度は500℃、圧力は大気圧の約200倍とかなり過激の反応です。
めでたくアンモニアの合成方法が確立され、それじゃあ工場で大量生産しよう!!となりますが、やはりここでも問題が起こります。
カール・ボッシュさんの功績とは?
温度は500℃、大気圧の約200倍の圧力で合成するのは研究室では簡単です(とはいってもかなり大変であり、特別な装置が無いと難しいですが…)。しかし、工場で大量生産となると、かなりのエネルギーが必要であり、危険です。さらにはオスミウムという金属はかなり高価であり、大量生産となるとコストがかなり必要です。
研究室で新たな反応の発見や理論の探求等を行う研究を「基礎研究」といい、それらを知見として工業化、大量生産しようという研究を「応用研究」といいます。ハーバーさんがやっとの思いで実現した基礎研究も今度は応用研究という壁にぶち当たります
化学メーカーで勤務されている方々は嫌という程経験したと思われますが、基礎研究も大変ですが応用研究も本当に大変なのです。実験室で起こった反応、現象が工場では上手くいかないという事はあるあるです。実験室とは異なる設備、技術等が必要です。
ここで登場するのがBASF社に在籍したカール・ボッシュさんです。彼は化学だけではなく機械の知識も会得しているため、何度も実験しやっとの思いで設備を完成したそうです(金属製の反応容器が爆発したこともあったそう…)。
さらには、同じくBASF社在籍のアルヴィン・ミタッシュさんがオスミウムより安価な四酸化三鉄Fe3O4を触媒として働くことを発見しました。ハーバー・ボッシュ法とミタッシュさんの名前は記載されていませんが、様々な方々がこの反応を構築していったのですね。
問題は窒素だけではありません。水素の確保も問題です。窒素は空気中に79%も存在しているため確保には問題ありませんが、水素は簡単に手に入れることができません。水の電気分解でも大量生産とはいきません。
最終的にボッシュさんは水と石炭を反応させて水素を大量生産することにしました。水素は現代でも「水素化社会」と言われる程、必要な資源です。水素の生産は今でも課題の一つです。
そして、ついに1913年にアンモニアの大量生産に成功されました。ハーバー・ボッシュ法は水と石炭と空気からパンを作る方法だと称されました。石炭は無いですが水と空気から食料を産み出すとはドラ●もんの世界みたいですね笑(詳しくはドラ●もん の●太のワンニャン時空伝 2004年公開映画より)
高校教科書で少ししか触れていないことでも、実はたくさんの研究者が力を合わせて成し遂げた素晴らしい功績だということを忘れてはいけませんね。
ちなみに、触媒は四酸化三鉄Fe3O4だけではなく、酸化アルミニウムAl2O3や酸化カリウムK2O、酸化カルシウムCaOも混ざっており、近年ではルテニウムRuという元素も含まれています。これにより、従来の触媒よりも低い温度、圧力で良いにも関わらず約20倍もの作用をもちます。現在でも絶え間ない研究により改良されているのですね。
ニトロゲナーゼとは?
ここまで、人類の長年の研究により水と石炭と空気から肥料を作り出すことに成功したハーバー・ボッシュ法ですが、実は菌は常温常圧で簡単に空気から肥料を作り出すことができるのです。
それが、マメ科植物に共生するRhizobium(根粒菌)や、単生の好気性細菌であるAzotobacter等、窒素固定を行う細菌が有している酵素(生物体内に存在するタンパク質からできた触媒の役割を果たす物質)、ニトロゲナーゼ(Nitrogenase)です。化学反応式は以下の通りです。
N2+8H++8e–+16MgATP→2NH3+H2+16MgADP+16Pi
頭が痛くなる式ですね笑 要は空気中の窒素から簡単にアンモニアを生成し、それが肥料として利用されている訳です。恐るべし、植物、細菌💦
ハーバー・ボッシュ法のデメリットとは?
最後にハーバー・ボッシュ法のデメリット(?)をご紹介します。科学が発展すると、残念ながらそれを悪い方向へと使ってしまう事もあります。
火薬の製造
アンモニアはオストワルト法により、硝酸HNO3を作ることができます。他にもそれらを利用して有機合成等にも利用されたりします。窒素Nは有機化合物の主元素の一つだと前回のブログでも言いましたよね? ちなみに、僕も大学院時代は有機化合物にニトロ基の導入を行っていました。
前回のブログ↓↓

ただ、残念なことに、そのニトロ化合物は火薬等にも使われることもあります。アンモニアの需要が高まったのは肥料の原料のためだけではありません。アンモニアはノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルさんが開発したダイナマイトの原料としても利用できます。
ダイナマイトは鉱山開発、鉄道開発にも必要不可欠であり、そのためにもハーバー・ボッシュ法の需要が高まりました。しかし、残念ながら軍事用火薬等にも使用ができてしまいます。
それを利用して戦争にも用いられたりします。
環境汚染
それだけではありません。アンモニアの生成のおかげで有機化学の世界でも目覚ましい発展があった一方、窒素を含んだ有機化合物が環境汚染にも繋がっています。
例えば光化学スモッグ、酸性雨とありますが、水質汚濁、特に赤潮の原因ともなっています。肥料の三大元素、カリウムKは海水に大量に存在していますが、窒素NやリンP(洗剤等に使用)を海水に垂れ流しにしてしまうと植物性プランクトンの大量発生、つまり赤潮の原因となってしまうのです。
化学の発展は時には悪い方向への発展、環境汚染へとも繋がってしまうのです。
いかがだったでしょうか? 高校化学で簡単にしか学習していない反応でもこれだけの歴史があるのです。いや、素晴らしい功績だったから高校教科書にも掲載されたと言った方がいいのかな?
本日のブログはここまで!!最後まで読んで頂きありがとうございました!!


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